煮込み

このところアルコールを口にしていない。
単純に仕事が気がかりで、思い切りよく飲めないからだ。昔は晩酌を欠かすと何のために生きてるのかわからないような気にさせられたものだが、ずいぶんと我慢がきくようになったものだ。

とはいえ、強烈な誘惑の前に勝てないことはある。
昨日も西荻駅前を通りかかったとき、ついＥの煮込みのことを考えてしまった。一度はその味をアタマから振り払ったが、また思い直してからが早かった。外に設けられた席に座り、サッポロラガーとともに注文をしてしまっていた。

子どもの頃から煮込みが大好きだった。たまに食卓に上ると何度もお代わりをし、将来は酒飲みになるなぁなどと言われるのも、大人の嗜好を理解していると認められたようで嬉しかった。

つい最近まで煮込みは豚のモツが決まりだと思っていた。少し前によく利用する精肉店Ｔの店主に「家用に注文したやつだけど、多すぎるから少し持ってかない？」と言われ、生の牛モツを購入したことがある。このとき作った煮込みが実に最高の出来だった。店主によれば何度も煮て旨いのは牛モツで、豚モツは臭みが出るらしい。

その後も精肉店へは足繁く通っているが、まだあの生の牛モツとは再会できていない。